35歳の女性。現在、6か月児の子育て中であるが、1か月前からテレビも新聞も見る気が起こらないほど周囲への興味と関心が低下し、児と触れ合うこともおっくうになった。物事の判断が鈍くなり、子育てに自信をなくし、自分を責め、ささいなことから不安になりやすくなったため、児を祖母に預けて精神科病院に入院した。入院翌日から不安の軽減を目的に作業療法が開始された。
この患者に対する作業療法士の対応で適切なのはどれか。
1→文面から、本症例は急性のうつ状態と考えられる。うつ状態は「内的エネルギーが枯渇している状態」といえる。運動していなくても疲れている状態のため、運動によって体力の増強を図ることは、作業療法の対応として不適切である。
2→うつ状態の症例に対しては、自分のペースで行うことが出来る活動(本を読んだり、音楽を聞いたり、ゆっくり過ごす等)を行うことが進められ、趣味をみつけるよう積極的に働きかけることは、この時期の作業療法としては不適切である。活性化よりも沈静化を目指すことが大切である。
3→本症例がうつ状態になった原因は子育てであると考えられる。急性期のうつ状態患者に対して、原因となった事象の子育ての情報提供を行うことは、作業療法の対応として禁忌であるといえるため、不適切である。
4→急性期のうつ状態患者に、集団活動は無理に行うべきではないため、作業療法の対応として不適切である。
5→急性期のうつ状態患者に、本人の気持ちや欲求に合った時間を作り出す工夫をすることが大切である(ゆったりした時間、目的のはっきりした時間等)。本人のペースで、生活リズムを整えていくことも必要である。そのため、ゆとりが持てるような日中の過ごし方を話し合うことは、作業療法の対応として適切である。