55歳の女性。乳癌。ステージIV。今回、両下肢の脱力を認めて受診した。腰椎と肋骨の多発病的骨折と診断された。L2以下の不全対麻痺を認め、放射線治療終了後に作業療法開始となった。ベッド上生活で食事以外には介助を要していた。Performance Statusは4である。患者は「足が動かないが、家族と暮らしたい」、家族は「できれば家につれて帰りたい」と希望した。この患者への作業療法について適切なのはどれか。
1→本症例は、放射線治療が終了し、作業療法が開始となった時期である。退院の時期を決定するのは時期尚早である。
2→下肢機能訓練は「行わない」のではなく「行う」。本症例は、L2以下の不全対麻痺で、両下肢の脱力もみられ、「足が動かない」という訴えもあるため、関節拘縮の予防と介助量軽減のため必要である。
3→福祉用具の適応を検討する。本症例は、ベッド上生活で食事以外には介助を要しており、作業療法を開始した時期では、症例の現状やニーズを把握し、福祉用具や残存機能を活用して自立した生活を目指すことが重要である。患者と家族は「自宅で生活する方向」という希望を持っている。入院中に自宅に近い環境を整えることで、退院後の生活にスムーズに移行できるようにする。
4→現時点から積極的な離床を図ることの優先度が低い。放射線治療後の副作用は、頭部で脱毛、口腔で口の渇き、味覚の異常、胸部で咳、息切れ、腹部で軟便や下痢などがみられる。そのため、本症例は、放射線治療後の副作用を考慮し、現時点での積極的な離床は行わない。
5→ADL訓練時にはコルセットは「装着する」。本症例は腰椎と肋骨の多発病的骨折を認められて骨折しやすい状態である。