50歳の女性。10年前に義母の介護に際して突然の視力障害を訴えたが、眼科的異常はみられなかった。1か月前に夫の単身赴任が決まってから、下肢の冷感、疼痛を主訴として、整形外科、血管外科などを受診するも異常所見は指摘されなかった。次第に食事もとれなくなり、心配した夫が精神科外来を受診させ、本人はしぶしぶ同意して任意入院となった。主治医が、身体以外のことに目を向けるようにと作業療法導入を検討し、作業療法士が病室にいる本人を訪問することになった。本人は着座すると疼痛が増強するからと立位のままベッドの傍らに立ち続けて、他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す。
この患者に対する病室での作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1→他科受診できるよう約束するのは、直接的解決にならない。身体表現性障害では器質的な障害はないためである。他科受診に関しては主治医と相談するように改めて伝え、なぜ「他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す」のか傾聴する。
2→夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねる優先度は低い。現段階では身体的症状に関心が向けられている。夫の単身赴任をどのように感じているかを尋ねてもそれには本人の関心は向かない可能性が高い。治療にはつながらないため不適切。
3→痛みが軽減することを「約束して」作業療法への参加を促してはならない。痛みが軽減すると断定できないためである。さらには、痛みに固執することもあり得る。主治医の指示通り、身体症状以外のことに関心を向けるアプローチが必要である。
4→身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝える優先度は低い。現段階では身体的症状に関心が向けられている。また、繰り返し、心の問題であると伝えても、患者は、自分の主張を否定されている気持ちになるため。
5→本症例は、異常な検査結果がないにも関わらず、身体症状が続き異常所見がないことを受け入れられないような発言を繰り返していることから身体表現性障害であると考えられる。まずは他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう留意しながら聞き役に徹することが適切な対応といえる。