57歳の女性。夫と寝たきりの母親との3人暮らし。編み物を趣味としていた。患者は手の抜けない真面目な性格で、介護が2年続いたころから「体が動かない。死んでしまいたい」と寝込むようになった。夫に連れられ精神科病院を受診し入院。1か月後に作業療法が導入となった。しかし、作業療法士に「母のことが気になるんです。ここにいる自分が情けない」と訴えた。
この患者への対応として適切なのはどれか。
1→本症例は、「自分が情けない」と自己評価の低下がみられ、入院中も「母のことが気になるんです」と母への必要以上の気遣いもみられる。この状態で退院しても、母の介護を再開して、すぐに入院直前の状態に戻ってしまう恐れが高いと考えられる。入院治療の継続が必要であり、早期の退院の提案をするのは不適切である。
2→他の患者をお世話する役割を提供するのは不適切。うつ病を発症した現在は過去のようにうまく行えず、本人が期待する程度にはできないと考えられる。そのため、患者はますます自己評価が低くなる可能性が高くなると考えられる。
3→趣味の編み物は、入院前にしていたことであるが、うつ病を発症した現在は過去のようにうまく行えず、本人が期待する程度にはできないと考えられる。患者はますます自己評価が低くなる可能性がある。
4→本症例は、「体が動かない。死んでしまいたい」=希死念慮があり、気力の減退がみられることから、うつ病を疑う。うつ病患者に対する急性期の作業療法は、十分な休息をとりながら、負担の少ない作業への参加を促すことが重要である。
5→他の患者との会話による気晴らしを促すことは負担が大きいため不適切である。回復後期に集団の中で他者との体験や感情を共有するのが良い。現在は、自分のペースででき、達成感があって、自己評価を高めるような作業が望ましい。