31歳の女性。2か月前に地元が大規模な災害に遭い、親が死亡したものの看護師として救助隊に加わり1か月活動した。通常の勤務に復帰後1週ころから不眠や中途覚醒が続くようになり、災害発生時の情景を夢で見るようになった。夫が様子を聞いても詳細を語ろうとせず、その後、自ら精神科を受診し外来作業療法が処方された。
考えられる疾患はどれか。
1→適応障害とは、生活の中で生じる日常的なストレスにうまく対処することが出来ない結果、抑うつや不安感などの精神症状や行動面に変化が現れて、社会生活に支障をきたしてしまう状態のことである。本症例には当てはまらないため、不適切である。
2→パニック障害とは、特に身体の病気がないにも関わらず、突然動悸、呼吸困難、目眩などの発作(パニック発作)を繰り返す。そのため発作への不安が増して、外出などの日常生活が制限されてしまう状態のことである。本症例には当てはまらないため、不適切である。
3→全般性不安障害とは、毎日の生活の中で漠然とした不安や心配を慢性的に持ち続けて、尽きることのない不安のために徐々に身体症状や精神症状が現れるようになり、不安が悪循環していく状態のことである。本症例は、原因となる出来事が明確であるため、不適切である。
4→急性ストレス障害(ASD)とは、心的外傷を経験した後、体験をはっきりと思い出し悪夢として現れること(追体験)や、そのために過覚醒状態となり、体験に関したことを避ける傾向(回避)が続く状態のこと。数日から4週間以内に自然治癒する一過性の障害である。本症例は、経験から1ヶ月以上経過しているため、不適切である。
5→PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックしたり、悪夢を見ることが続き、不安や緊張が高まり、辛さのあまり現実感が乏しくなる状態である。PTSDは、体験から数ヶ月から数年間経ってから症状がはっきりしてくる場合もある。本症例は、症状や時期の点から考えても、PTSDと考えられる。