1→痙縮とは筋緊張が亢進している状態である。痙縮は錐体路障害によって出現するので、必ず他の錐体路症候を伴うものである。踵部の発赤とは関係性はないため不適切。
2→褥瘡とは、皮膚への血液の供給が一定期間妨げられたために起こる阻血性壊死である。この症例は頸髄完全損傷、第4頸髄機能残存で寝返りなどの起居動作にも介助が必要な状態である。そのため、一定期間皮膚への血液供給が妨げられ、踵部に褥瘡の初期症状である発赤が認められた状態と思われるため、褥瘡は正しい。
3→骨萎縮とは、長期安静や臥床、非荷重、麻痺などで力学的ストレスが減少した状態で起きる。頸髄損傷患者でも起きる可能性はあるが、踵部の発赤とはつながらないため不適切である。
4→静脈血栓症とは、手術や長期臥床などによる血液のうっ滞、全身的な血液凝固性の亢進である。下肢では左腸骨静脈、下腿深部、腋窩静脈におこりやすい。症状は浮腫、痛み、熱感などのであり、この症例の踵部の発赤とはつながらないため不適切である。
5→異所性骨化とは、筋肉の中など本来骨がない部分に骨が出来てしまうことである。誘発因子として、脊髄損傷、頭部外傷や人工透析、人工股関節置換術後がある。頸髄損傷でも起きる可能性はあるが、異所性骨化は中枢から抹消にかけて発生しやすく、踵部の発赤とはつながらないため不適切である。