35歳の男性。右利き。バイク事故のため救急搬送された。頭部MRIのT2強調像にて両側前頭葉の眼窩面と背外側とに高信号域が認められた。約1か月後に退院。半側空間無視、記憶障害および視知覚障害はないが、脱抑制による職場でのトラブルが続き作業療法を開始した。
この患者に行う評価で正しいのはどれか。
1→BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)遂行機能障害症候群の行動評価法とは、前頭葉損傷による遂行機能障害に対する検査方法である。BADSは、質問紙と6つの下位検査から成り立っており、質問紙は感情や人格、動機づけ、行動、認知の4つのカテゴリーで計20の質問で作られている。問題文の患者は前頭葉に高信号域が認められ、症状として脱抑制がみられるため、前頭葉損傷と考えられる。評価法として正しい。
2→BIT(Behavioural inattention test)は、半側空間無視を対象に考案された行動無視検査日本版である。上位検査として通常検査と行動検査がある。それぞれの試験や課題に対してカットオフ値が設定されており、その結果により、半側空間無視の可能性の有無を評価することができる。問題文の患者は、半側空間無視症状はみられないとあるため、評価法として不適切である。
3→RBMT(Rivermead behavioral memory test)日本版リバーミード行動記憶検査は記憶検査方法の一つである。記憶障害による日常の問題をとらえるために、「日常生活上いくつかの課題を遂行する記憶をしておく」「日常生活を適切に送る上で必要な情報のいくつかを保持しておく」ことが評価でき、作業行動上の記憶障害が目立つ患者に適切な評価方法である。問題文の患者は、記憶障害がないとされているため、評価法として不適切である。
4→SLTA(Standard Language Test of Aphasia)標準失語症検査は、現在日本で使用されている失語症検査の一つである。音声言語と文字言語の理解と表出の各側面のレベルを評価するために構成されている。問題文の患者は、頭部MRI結果からも文面からの失語症の可能性は少ないため評価法として不適切である。
5→VPTA(Visual Perception Test for Agnosia)標準高次視知覚検査は、右半球の頭頂葉から後頭葉を中心とした部位が損傷したことにより生じる、視知覚・視空間障害の評価方法である。問題文の患者は、頭部MRI結果も当てはまらず、視知覚障害はないと記載されているため、評価法として不適切である。