65歳の女性。元来、几帳面な性格だが友人も多く活動的に過ごしていた。3か月前に、自宅のリフォームを契機に、早朝覚醒、食思不振、抑うつ気分や意欲低下が生じ、友人とも会わないようになった。自宅で自殺を企図したが未遂に終わり、1か月前に家族が精神科を受診させ、即日医療保護入院となった。単独散歩はまだ許可されていないが、抗うつ薬による治療で抑うつ気分は改善傾向にあり、病棟での軽い体操プログラムへの参加を看護師から勧められて、初めて参加した。
この時点での患者に対する作業療法士の関わりで適切でないのはどれか。
1→必要に応じて不安を受け止めるのは適切である。不安を訴えたら、共感、受容的な態度で接する。
2→過刺激を避けながら短時間で行うのは適切である。長時間の作業は負担になり、疲労を避けるためである。
3→具体的体験により現実感の回復を促すのは適切である。一方、うつ病に非現実的な体験(気分転換に海外旅行など)を勧めるのは、ストレスになる可能性もあり行わない。
4→参加各回の達成目標を明確にして本人と共有する必要はない。なぜなら、達成目標を明確にすると、目標に達しない場合に自信をなくしてしまう可能性があるため。
5→本症例は、抗うつ薬による治療で抑うつ気分は改善傾向にあるが、抗うつ薬には副作用が多く、随時アセスメントする必要がある。主な副作用としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)では吐き気・食欲不振・下痢、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)では吐き気、尿が出にくい、頭痛などがあげられる。