65歳の女性。Parkinson病。Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ。屋内歩行は伝い歩きをしている。薬物コントロールができ次第、退院予定である。運動機能維持を目的とした作業療法で優先順位が低いのはどれか。
1→Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢは、軽~中等度パーキンソニズム・姿勢反射障害がみられる時期である。立位でのボール入れは、体幹伸展を促し、前傾姿勢の進行予防ができる。また、両上肢屈曲を促し固縮・無動の進行予防ができる。立位をとることで、姿勢反射障害に対するバランス運動も担っている。
2→階段昇降は、歩容の改善、下肢筋力強化の効果も期待できる。Parkinson病の運動機能維持を目的とした作業療法には、矛盾性運動(逆説的運動)が有効である。矛盾性運動とは、本来難しいはずの動作が、逆に簡単になる現象のこと。例えば、すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることがあり、これは、横棒をまたぐ動作が、足を出すための強い動機付けになるためで、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えてもらうと、足がスムーズに出やすくなる。リズムや目標物が、足を出すためのタイミングや方向性を補助してくれるためであり、階段昇降も矛盾性運動の一種です。階段昇降は、平地歩行に比べて、足を出すための強い動機付けと、リズムと目標物が提供されるため、歩行が改善し、下肢筋力も強化される。
3→座位でのゴムボールのキャッチボールは、上肢屈曲を促し固縮・無動の進行予防ができる。また、座位保持にてリーチ動作を促すため、座位バランス訓練につながる。
4→座位でのコーン入れは、上肢屈曲を促し固縮・無動の進行予防ができる。また、座位保持にてリーチ動作を促すため、座位バランス訓練につながる。
5→陶芸は、選択肢の中で最も優先順位が低い。その理由は、運動範囲が限られていることや、前傾姿勢が長時間続くことである。一方で、陶芸には①創造性の発揮、②気分のリフレッシュ、③ストレスの軽減、④充実感や成就感などのメリットがある。陶芸は認知症やうつ病などの疾患に対して有効な介入として行われることが多い。