8歳の男児。幼児期より落ち着きがなくじっとしていられず、家族で外出した際にはよく迷子になり、両親も養育に困難を感じていた。小学校に入学してからは、授業中に勝手に席を立って歩き出したり、順番を守ることも難しく、日常的に忘れ物や落とし物も多く、うっかりミスをして教師に注意されるが、その後も同じミスを繰り返していた。授業中は周囲の雑音に注意を削がれて勉強に集中できず、最近では学業不振が目立ち始めたため放課後等デイサービスで作業療法士が対応することになった。
作業療法士の対応として適切でないのはどれか。
1→軽度発達障害の作業療法では子どもの協調運動障害や行動障害の改善を期待して、各種の感覚統合的アプローチが行われている。感覚統合療法は、学習障害や自閉症、注意欠如・多動性障害に適応となる場合が多い。
2→ペアレントトレーニングとは、親(保護者)を対象に子どもの養育技術を獲得させるトレーニングのことである。発達障害児の反社会的行動・不適応行動の改善を目的に行われる。注意欠如・多動性障害(ADHD)の児の親に対しても行われる。
3→社会生活技能訓練(SST)を実施する。社会生活技能訓練(Social Skills Training:SST)は、「人が地域社会で自立して円滑に生活できる」ための技能を習得することを目的とし、日常的な生活場面で適切な行動がとれるよう、具体的な場面を設定してロールプレイ(役割分担)を行いながら練習するもので、認知行動療法で行われる手技である。
4→学校を訪問して授業の様子を観察する。先生や親から見る児の様子と、作業療法士視点は異なる可能性があるためである。また、児の授業の様子を観察して行動の実態を把握できるため、作業療法計画書作成に役立たせることができる。
5→担当教員に本人の行動修正をより促すよう依頼する必要はない。注意や叱責は自信喪失や自尊心の低下につながるためであり、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが必要である。