61歳の男性。BMI 27.5。前頭葉および側頭葉に著明な萎縮を認めて入院加療中。発語は発症前より減少しているが、エピソード記憶や手続き記憶は比較的残存している。自分の昼食を食べ終えた後も他人の食事や配膳車の残飯を勝手に取って食べる行為があり、取り戻そうとすると激しく怒り出す。午後の集団体操プログラムではすぐに立ち去ろうとする一方、カラオケには興味を示し、集中して数曲を歌う。
食行動に対する作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1→減量の必要性を説明しても意味がない。本症例は、BMIが25以上で、肥満といえるが、自分の昼食を食べ終えた後も他人の食事や配膳車の残飯を勝手に取って食べる行為(脱抑制)によって行われている要素が強い。前頭側頭型認知症(Pick病)が原因であり、認知機能が低下しているので、減量の必要性の説明で脱抑制を止めることは難しい。
2→他の患者さんの受容度によって異なるため難しい。一般的な患者は、同じ料金を払っている以上、自分の食事を取られては受容的に接することはできない可能性が高い。
3→そもそも本症例は設問から「午後の集団体操プログラムではすぐに立ち去ろうとする。」、体操プログラムには興味を示しておらず、適切ではない。
4→毎回の昼食が終了次第、カラオケのプログラムを導入することは、食行動に対する作業療法士の対応で最も適切である。本症例は、前頭側頭型認知症(Pick病)の脱抑制により「自分の昼食を食べ終えた後も他人の食事や配膳車の残飯を勝手に取って食べる行為」がみられる。一方で、「カラオケには興味を示し、集中して数曲を歌う」。毎回の昼食が終了次第、カラオケのプログラムを導入することで、脱抑制をとめられ、食べ物から注意をそらすことができる。
5→前頭側頭型認知症(Pick病)が原因であるため。また、本症例は、設問から「取り戻そうとすると激しく怒り出す(易怒性)」様子も見られる。行動の抑制は困難である。