85歳の男性。脳血管障害による右片麻痺で、発症から5か月が経過。回復期リハビリテーション病棟に入院中。主な介護者は7 7歳の妻。左手でT字杖を使用して屋内平地歩行は可能であるが、屋外は車椅子介助である。排泄はトイレにて自力で行うが、夜間頻尿と切迫性尿失禁がある。自宅の見取り図を示す。
在宅復帰に向けて住環境の調整を行う際、作業療法士のアドバイスで正しいのはどれか。
1→夜間は、頻尿と切迫性尿失禁がある。 現在A(寝室)より、B(客室)の方がトイレに近く、戸も引き戸であるため適していると言える。切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起きることもある。
2→基本的に、非麻痺側、本症例なら左に起き上がりを行うのが良い。右片麻痺の場合、左側へ起き上がるほうがよい。ベッドの頭の向きを逆にする必要はない。
3→開き戸には、内開き戸・外開き戸があり、現在の状態が外開き戸である。この間取りのトイレでは、扉が内開きになると、トイレのスペースが狭くなり、杖を使うことが難しくなる。トイレの扉を内開きに変更するのは適切ではない。
4→屋外スロープは1cmではなく、5cmの立ち上がりをつける。屋外スロープの立ち上がりとは、スロープから落ちないようにするための、左右にある縁石のようなものである。車椅子の場合は脱輪しないように屋外スロープには立ち上がりがあった方がより安全である。
5→浴室に入出槽用の天井走行リフトを設置する必要はない。なぜなら、屋内ではT字杖を使用して移動できているため。ただし、浴槽内での事故も多いため手すりや浴槽内椅子、バスボードの設置の導入など検討していく。