55歳の男性。2年前に筋萎縮性側索硬化症と診断された。2ヶ月前に誤嚥性肺炎を起こして入院した。肺炎改善後、胃瘻が造設された。構音障害が重度で、発音は母音のみ可能、発声持続時間は8秒。湿性嗄声はない。唾液の空嚥下は可能である。上肢の筋力はMMTで4レベルであるが、体幹及び下肢の筋力は3。歩行のFIMは1、移乗のFIMは6及びトイレ動作のFIMは6であった。自宅退院を計画している。
この患者に対する対応で正しいのはどれか。
1→本症例は、誤嚥性肺炎後に胃瘻が造設されている。食事で常食を再開することは、誤嚥のリスクが高く、不適切である。食事は嚥下評価を行った上で、ゼリーなどから段階付けて行うことが望ましい。
2→エアマットは褥瘡予防に用いられる。本症例は、歩行のFIMは1であるが、移乗・トイレ動作のFIMは6と寝たきりではなく、褥瘡リスクは低い。現段階でエアマットの使用を勧めることは、不適切である。
3→透明文字盤は、口頭や筆談でのコミュニケーションが困難だが眼球運動能力が残存している患者に適応となる。本症例は、構音障害が重度で口頭での発語は困難であるが、上肢の筋力はMMT4と保たれており、筆談又は通常の文字盤でのコミュニケーションが可能であると考えられる。透明文字盤の使用を勧めることは、不適切である。
4→本症例は、歩行のFIMは1で移動することは全介助であるが、移乗とトイレ動作のFIMは6と修正自立である。ポータブルトイレをベッドサイドに設置することで、移動せずに排泄動作を行うことが出来ると考えられる。そのことから、ポータブルトイレの使用を勧めることは正しい。
5→チンコントロール電動車椅子は、頸部以下が動かすことが出来ない患者が、頸部・頭部を動かして顎で車椅子を操作する。本症例は、上肢の筋力がMMT4と保たれており、普通型車椅子や電動車椅子が使用可能と考えられる。チンコントロール電動車椅子の導入を勧めることは、不適切である。