29歳の男性。バイク転倒事故による右前頭葉脳挫傷および外傷性くも膜下出血。事故から2週間後に意識清明となり、作業療法が開始された。運動麻痺と感覚障害はない。礼節やコミュニケーション能力が保たれているが、感情表出が少なく、ぼんやりとしていることが多い。既知の物品操作方法は覚えているが、事故後の出来事に関する情報は忘れやすい。作業療法開始時間までに支度を整えることが難しく、しばしば時間に遅れる。
この患者の状態を評価するために適切と考えられる評価法はどれか。2つ選べ。
1→BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価) は、前頭葉の遂行機能を評価する検査である。本症例は、右前頭葉脳挫傷や発動性の低下などの症状を呈しているため適切である。
2→RBMT(Rivermead Behavioral Memory Test:リバーミード行動記憶検査)は、日常生活を想定して行う記憶検査である。記憶障害の性質や程度、リハビリテーションの効果の評価に用いられる。本症例は、事故後の出来事に関する情報は忘れやすいという症状がみられ、適切である。
3→SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、失語症の検査である。失語症は言語野(主に左大脳半球)の障害で出現しやすく、失語症状もみられないため本症例の検査としては不適切である。
4→SPTA(Standard Performance Test for Apraxia:標準高次動作性検査)は、失行症および行為障害を評価する検査である。症例ではこれらの症状はみられず不適切である。
5→VPTA(Visual Perception Test for Agnosia:標準高次視知覚検査)は、視知覚機能の検査法である。視知覚障害は後頭葉を中心とした部位の損傷により出現しやすく、不適切である。