1→相貌失認とは、顔の識別ができない症状のことである。顔の識別には、表情の理解も含まれるが、相貌失認の患者は、表情を読み取ることは難しい。相貌失認は、右半球の後頭葉から側頭葉にかけての脳領域に障害がある場合に起こりやすい。この脳領域は、顔の特徴を処理するために重要な役割を果たしている。相貌失認の患者は、顔だけを見てもその人が誰か分からないが、声や服装や髪型などの他の情報を使えば、その人の身元を特定できる場合がある。
2→純粋失読は指でなぞると読むことができる。純粋失読(視覚性失読)とは、左半球の後頭葉に損傷がある場合に発生する症状。文字を読むことができないのに、書くことはできるという特徴があり、文字を指でなぞると読めることもある。一方、頭頂葉性失読とは、書くことも読むこともできない状態を指す。
3→同時失認は、個々の物体や人間の認識ができるが、情景画の全体像を把握できない状態である。情景画の細部は認識できるものの、それらがどのような場面を構成しているか理解できない。
4→色彩失認とは、色覚自体は正常に機能しているにもかかわらず、提示された色の名称を言語化したり、言語的な指示に従って色を選択したりすることが困難な状態のことである。色彩失認の患者は、同じ色の物体を見分けることや、非言語的な色知覚の課題を解くことは可能であるが、特定の色を持つ物体の形は記憶できるものの、その色を想起することができない。この障害は、後頭葉に損傷を受けた場合に多い。
5→物体失認とは、物体が見えるのにそれが何であるか分からない状態である。この症状は、優位半球の前頭葉ではなく、劣位半球の頭頂~後頭葉に障害があるときに起こる。視覚性物体失認と呼ばれるこの現象は、物体の形や色などの特徴を認識できるのに、それらを統合して物体として認識できないことが原因である。